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二次的著作物とは?弁護士がわかりやすく解説します

山下江法律事務所

 「二次的著作物とは『著作物から創作される著作物』だ」と言ったら、どの様な物を思い浮かべるでしょうか。二次的著作物とは具体的にどの様なもののことなのか、著作物から著作物が創作されると著作権はどうなるのか、二次的著作物を創作するには何に注意しなければならないのかについて、わかりやすく解説します。

目次

二次的著作物の例

女性のアイコン画像女性
SNSで漫画やアニメのファンアートを見たりするのですが、あのようなものを無断で公開したらダメですよね?
いわゆる「二次創作」というものですね。SNSや動画サイトのように、個人が公開できる場が増えたことで広く知られるようになりました。おっしゃるように、元の著作物の権利者に無断で公開したら著作権の侵害となる可能性が高いと思います。
女性のアイコン画像女性
きちんと許可を取ったら問題ないってことですね。人気がある二次創作作品の中には、さらにそれを派生させた三次創作?があったりするのですが、この場合、誰に許可を取ったらよいのでしょうか?
二次創作(正確に言うと、その一部)は、法律上の用語で「二次的著作物」といい、著作権法でその扱いについて定められています。二次的著作物にもいろいろな種類があるので、まずは分類してみましょうか。

著作物を翻訳したもの

 「翻訳」とは、小説や歌詞などの言語の著作物を他の言語に置き換えることです。日本語で書かれた小説を英語に翻訳したものなどがこれにあたります。

著作物を編曲したもの

 「編曲」とは、メロディーに他の楽器が演奏する部分を追加するなどして、楽曲としてまとめることです。「アレンジ」ということもあります。作曲家が編曲まで行うこともありますが、著作権法が想定しているのは、作曲者以外の人が編曲した結果できた楽曲です。オーケストラ曲をピアノ曲に編曲したものなどがこれにあたります。

著作物を翻案したもの

 「翻案」とは、既存の作品を原作・原案として、別の作品を作ることをいいます。

原作の漫画化や映画化

 小説を原作としたコミカライズ(漫画化)、アニメ化は翻案にあたります。同様に、舞台化や映画化も翻案です。

対象年齢の変更

 小説を子ども向けに言葉を言い換えるなどした作品(ジュニア版)は翻案にあたります。

文章の要約

 元の文章の内容がわかる形で要約することは翻案にあたります。

美術の著作物の変形

 彫刻を撮影した写真や絵画、アニメキャラクターのフィギュアなど、美術作品の表現形式を変更することも翻案にあたります。

ファンアート・同人誌

 アニメ・漫画のキャラクターやストーリーを元にした作品は翻案にあたります。

二次的著作物とは

女性のアイコン画像女性
二次的著作物にもいろいろあるんですね。
ここで二次的著作物の定義について確認しておきましょう。著作権法2条11号では、二次的著作物を「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう」と定義しています。「翻訳」や「編曲」は例示なので、ポイントは既存の著作物に対して、新たな創作性を加えた著作物、であるということです。
女性のアイコン画像女性
「二次的」というくらいなので、は何となくわかりますが、はどういうことでしょうか?元ネタがあれば、全部「二次的著作物」というわけではないんですか?
先ほど、「二次創作(正確に言うと、その一部)」といった部分が関係するのですが、詳しく説明しますね。

原著作物の存在

 まず、二次的著作物といえるためには、元となる著作物が存在することが必要です。したがって、元となるものが、単なるアイディアや事実そのものである場合は、それらを元にして著作物を作成しても二次的著作物とはなりません。著作物の定義については、「知らずに著作権侵害になるケースとそのペナルティを解説!」で詳しく説明しているので、そちらをご覧ください。

 また、「作風」や「画風」と呼ばれる著作者の特徴的な表現手法は、著作物そのものではないため、似た作風の著作物を作っても二次的著作物とはなりません。

二次創作物との違い

 次に、二次的著作物といえるためには、「新たな創作性を加えた著作物」であることが必要とされます。後で説明するように、二次的著作物の著作者にも権利が認められるため、保護を与えるに足りるものである必要があるのです。
 したがって、単なるコピーや模写は創作物かもしれませんが、著作物とはいえません。

二次的著作物に関係する権利者

女性のアイコン画像女性
二次的著作物の著作者にも権利が認められるのですか?
はい。通常の著作物に認められる権利は同じように認められるので、例えば無断で複製すると違法になります。
女性のアイコン画像女性
二次的著作物の場合、原作者は何か主張できないんですか?自分の著作物が元ネタになっているのに、何の権利もないというのは、なんだか気の毒な気がします。
そうですね。二次的著作物に関係する権利者とその権利について法律がどう定めているか確認しましょう。

二次的著作物の著作者の権利

 二次的著作物の著作者にも、通常の著作物に認められる権利が認められます。著作物に認められる権利としては、以下のものがあります。したがって、例えば、二次的著作物の著作者に無断で著作物を複製したり、インターネットで配信した場合は、著作権侵害となります。

著作者人格権

  • 公表権(著作権法18条
    未公表の著作物を公表するかどうか、公表する場合、どのように公表するかを決める権利
  • 氏名表示権(著作権法19条
    表時に著作者の名前(実名でもペンネームでも可)を表示するかしないかを決める権利
  • 同一性保持権(著作権法20条
    著作物のタイトル、内容を勝手に変更・削除・改変されない権利

著作財産権

  • 上演権・演奏権(著作権法22条
    著作物を公に上演したり演奏したりする権利
  • 公衆送信権(著作権法23条
    著作物を放送したり、インターネットで配信したりする権利
  • 口述権(著作権法24条
    著作物を朗読などにより、公に口述する権利
  • 展示権(著作権法25条
    写真や絵画の著作物を公に展示する権利
  • 頒布権(著作権法26条
    映画の著作物の複製物を譲渡・貸与する権利
  • 譲渡権(著作権法26条の2
    映画以外の著作物の原作品又は複製物を譲渡する権利
  • 翻訳権・翻案権(著作権法27条
    二次的著作物を創作する権利

 なお、二次的著作物の著作者の権利は、著作物を創作した時点で発生するため、原作者に無断で創作された二次的著作物にも権利が認められますが、原作者との関係では著作権の侵害となります。

原作の著作者の権利

 原作の著作者は、二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者と同じ権利を有するとされています(著作権法28条)。
 したがって、例えば小説をコミカライズした場合、原作の小説を書いた小説家には、漫画についても無断で複製されない権利があります。
 この原作の著作者の権利は、原作者に「専有する」とされているため、二次的著作物の著作者が自分の権利を譲渡したり、行使しないと契約したとしても、その効果は原作者には及びません。別途、原作者との間でも権利の扱いについて取り決める必要があります。

二次的著作物を創作するときの注意点

女性のアイコン画像女性
二次的著作物について、原作者にも権利が認められるなら、原作者としては、どんどん二次創作してもらったほうが得じゃないですか?
理屈の上ではそうかもしれませんが、無断で二次創作することは、原作者の翻案権を侵害しています。原作者も自分のイメージと異なる翻案をされることは、嫌でしょうしね。
女性のアイコン画像女性
では、二次的著作物を創作する場合、どのようなことに注意すればよいでしょうか。
翻案権の侵害が認められれば、損害賠償を請求されたり刑事処分を受ける可能性もあるため、原作者の許可を得ることが大前提となります。注意すべき点について説明しますね。

原作が著作権で保護されているか確認する

 著作権には保護期間が定められており、原則として著作者の死後(正確にはその翌年の11日から)70年を経過すると権利が消滅します。例えば、アンパンマンの作者やなせたかしさんは20131013日に亡くなられたので、201411日から70年後の20831231日の経過で権利が消滅します。

 原作の著作権が消滅しているときは、原作者に無断で二次創作を行っても権利侵害とならないため、自由に二次創作することができます。ただ、原作の著作権が消滅していても、二次的著作物の著作者の権利が保護されている可能性があります。例えば、原作が翻訳されていたり編曲されている場合、その翻訳や編曲を利用して二次創作するには、翻訳者や編曲者の権利が保護期間内であれば、許可を得ることが必要となります。

権利者の方針を確認する

 著作権を侵害しても、著作者が損害賠償を請求したり、処罰を求めたりしない限り、実際には損害賠償を支払ったり刑事処分を受けることはないかもしれません。著作者が全ての著作権侵害を把握することが不可能なため、泣き寝入り状態になっていることがほとんどです。しかし、企業が広告等で既存のキャラクターを原作者に無断で利用することは、企業イメージの低下につながるため、絶対に避けましょう。

 小説や絵本などは出版社、音楽については一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が窓口となっていることが多いので、問い合わせてみましょう。インターネットで公開されている作品については、作者がホームページ等で二次利用についてのガイドラインを公開している場合があるため、確認してみましょう。

 今回は、著作物の二次利用について説明しました。実際に著作物を利用する際には、その範囲や利用の対価について著作者と契約する必要があります。適切に契約しないと、契約したにもかかわらず思ったように利用できなかったり、著作権侵害となってしまうことがあるので、不安があるときは弁護士に相談することをおすすめします。

監修:弁護士法人山下江法律事務所


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