社会人として働く人ならば、「パワハラ」という単語を目にすることも多いといえます。
パワハラは受け続けることで自尊心が大きくそがれたり、うつ状態になったり、最悪の場合は自殺にまで行きついてしまうこともあるとても恐ろしいものです。
今回はこのパワハラの定義や種類を知るとともに、パワハラと戦う方法やパワハラと労災の関係について紹介していきます。
パワハラの種類やその具体例
ここでは、パワハラを「職場でのパワハラ」として解説していきます。
パワハラは、職務上の地位や人間関係を利用して、地位が上の者が下の者に対して精神的・身体的な苦痛を与えるものが多いですが、上下関係に無関係なときもあります。一般的な指導の範囲を超えて、不適正な行為が行われた場合、「パワハラである」とされます。
パワハラの種類は、大きく分けて以下の5つに分けられます。
1.身体に対する侵害
「成績が出ていないから殴る」「その必要性もないのに、起立させた状態で仕事に当たらせる」などのようなことをいいます。また、実際には肉体的な接触がなくても、煙草の火を近づけて威圧するなどのような行為もこの「身体に対する侵害」に分類されます。
2.精神に対する侵害
パワハラは多くの場合、身体的侵害にとどまらず精神的な侵害にまで及びます。
「お前はばかだ」「役立たず、死んでしまえ」「お前なんかどこへ行っても通用しない、ウチの会社がお情けで置いてやっているんだ」「脳なし」などのような暴言は、精神に対する侵害と判断されます。
3.大きすぎる、あるいは小さすぎる要求
仕事である以上、上司からなんらかの要求や命令が下ることは当然あります。
しかしそれが度を超えたものであれば、パワハラと認定されます。たとえば、「今月中に(業務内容的に不可能であるにも関わらず)1000万円の売り上げをあげろ」などと命じることです。
また、その人の能力からみて不当に低い要求をすることもパワハラにあたります。技術職で採用され、またそれに生きがいを見出していた人に、「毎日トイレ掃除しかやらせない」「新聞の切り貼りだけをさせ続ける」などです。
4.孤立させる
人間には相性がありますから、「どうしても合わない人とは、職務上の付き合いしかしない」などを個々の判断だけで行う場合はあまり問題にはなりません。
しかし部内全体で示し合わせて1人の人間を仲間外れにしたり、業務上必要なやり取りも無視したり、指導をしなかったり、1人だけ部屋に閉じ込めたり席を離したり(業務上必要な場合は除く)した場合は、パワハラであると判断されます。
5.プライバシーの侵害
職場で仲良くなった人同士が、それぞれのプライバシー空間にお互いを招き入れるのは自由です。ただ、「有給休暇の理由を聞き、上司が納得しなければ却下する」「恋愛関係などに踏み込みすぎる」「その人がプライベートでやっているSNSのアカウントを申告させる、またその内容について言及してくる」などのようなことが起きているのであれば、それはパワハラにあたる可能性が高いといえます。
パワハラに立ち向かう! パワハラと戦う方法とは
パワハラは、そのままにしておいてはいけません。
パワハラを受けた場合は、以下のような方法をとりましょう。
1.証拠を取る
録音をすることは極めて有用です。また身体的な侵害が行われた場合は病院に行き、診断書を取るようにしてください。
2.職場に相談をする
パワハラをしてくるのが直上の上司であり、かつもっと上の立場の上司ならば信頼できる……という場合は、「上司よりも立場の上の上司」に相談をするのも有効です。自分自身がパワハラをしている自覚がない人の場合、上司に「君のしていることはパワハラだ」と諭されることで止めることもあります。
3.公的機関に相談する
職場の人間が信用できない、あるいは相談しても解決しなかった場合は、公的(あるいは公的な性質を持つ)機関に相談します。
労働基準監督署や警察に相談しましょう。特にパワハラが、身体的侵害を伴う場合は警察への相談が有用です。
4.弁護士に相談・依頼する。
パワハラ問題を扱っている弁護士に相談してください。弁護士に依頼すれば、代理人として会社との交渉を行ってもらえたり、また、裁判を行い、労災として認定させることも可能となる場合があります。裁判を起こし、勝つことができればきちんとした対応を受けることができます。
パワハラを受けた場合、「それならば転職すればいい」と思う人もいらっしゃるでしょう。実際、「パワハラを受けていたがまったく気に病むことはなかった。相手が悪いということはわかっていたので、経験だけ積んでほかの業種に転職した」という人もいます。
しかしパワハラを受け続けると、自尊心が大きくそがれます。
「ここでうまくやっていけないということは、ほかのところに移ってもだめなんだ」「転職すればもっと悪くなるかもしれない、だからここにいる方がマシだ」と感じてしまう人もいます。
このような状態になった場合、被害者本人が自らの意思で動くのは困難です。そのような場合は家族がサポートできればよろしいのですが、弁護士にも相談してもられればと思います。
パワハラと労災
パワハラが労災だと認定されるためには以下の3つが必要です。
1.精神の病を発症している
睡眠障害やうつ病、適応障害が、パワハラによって起こる異常の代表例です。
2.半年程度以内で、職場で強い心理的な負担が掛けられていると認められた
「ここ半年以内で、職場で強い心理的な負担を掛けられていたこと」が分かれば、労災認定の対象となる可能性が高いです。
3.職場での出来事によって生じた症状であると判断された
精神への負荷は、「プライベートでの出来事(たとえば失恋や、近しい人の死)」などによってもかかるものです。
このため、労災として認定されるためには、「その原因が職場での出来事であること」が認められなければなりません。
労災認定が下りた場合、職場は必ず対策をとらなければならなくなります。また慰謝料が発生することもありますし、治療を受けている場合は治療費の請求もできます。
また「自分自身でパワハラを乗り越えたこと」による自信は、その人の今後の人生における大きな支えとなることでしょう。