《民法改正で債権の消滅時効について何が変わるの?》2019.12
(秘書)民法が改正されて債権の消滅時効についての規定も変わるそうですが、何が変わるんですか?ちなみに、消滅時効というのは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度ですよね?
(弁護士)そうですね。今回の民法改正での債権の消滅時効についての変更のポイントは、①時効期間と起算点に関する見直し、②生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間を長期化する特則の新設、③時効の中断・停止の見直し、の3点です。中でも企業法務で1番影響が大きいのは、①の時効期間と起算点に関する見直しだと思います。
(秘書)具体的には、何がどう変わるんですか?
(弁護士)消滅時効の期間は、原則として、改正前は、権利を行使できる時から10年でした。改正後は、権利を行使できる時から10年は同じですが、権利を行使できることを知った時から5年でも消滅時効が完成します(改正民法166条)。また、職業別短期消滅時効や商事時効がなくなります。
(秘書)これまでの職業別短期消滅時効や商事時効というのはどういうものですか?
(弁護士)職業別短期消滅時効というのは、飲食料は1年とか、小売商人の売掛代金は2年とか、医師の診療報酬は3年とかいったように、職業ごとに個別の短い時効期間が設定されていたものです。商事時効というのは、商行為によって生じた債権の時効期間は5年とされていたものです。
(秘書)改正前は債権の種類によって時効期間が細かく分かれていて複雑ですね。
(弁護士)そうですね。職業別短期消滅時効については、合理性に乏しいという意見もありました。だから、今回の改正で時効期間を統一したんです。ただし、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については特則が定められているので注意が必要です。
(秘書)消滅時効について、いつから改正後の法律が適用されるんですか?
(弁護士)消滅時効について改正後の民法が施行されるのは2020年4月1日です。ただし、施行日以降であっても、施行日より前に債権が生じている場合や、施行日より前に債権が発生する原因である法律行為がされている場合には、原則として改正前の民法が適用されます。ここでも、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については例外があるので注意が必要です。消滅時効が気になる場合は、弁護士に相談した方がいいですね。
執筆者:弁護士法人山下江法律事務所