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【Q&A】そうだ!弁護士に聞いてみよう!
《社員の不倫》
(秘書)よく芸能人が不倫の発覚を理由に活動自粛をしていますが、会社の社員が不倫をしていることを理由に、懲戒処分をすることはできますか。
(弁護士)最近は不倫に関するニュースが本当に多いですね。ただ、家庭内の問題と会社の問題は分けて考える必要があります。
(秘書)具体的には何が違うのでしょうか。
(弁護士)不倫は社会的・道徳的に非難される行為です。そして、配偶者との関係では不法行為にあたります。しかし、社員が不倫をしていることが発覚したからといって当然には懲戒処分はできません。
(秘書)なぜ懲戒処分をすることはできないのでしょうか。
(弁護士)社員が誰と恋愛をするかは社員の私的な問題であり、会社が取り締まることはできません。懲戒処分は、会社が、企業秩序や職場規律を維持するために、これを乱した労働者に対し、就業規則に基づき行う制裁です。社員は私生活についてまで会社の一般的な支配に服するわけではなく、あくまで社員の不倫が企業秩序や職場規律に影響を与えているという場合に懲戒処分の対象になるだけです。
(秘書)企業秩序や職場規律に影響を与えるとは具体的にはどのような事案があるのでしょうか。
(弁護士)参考になる裁判例がいくつかあります。1つ目は、既婚者である自動車教習所のスクールバスの運転手が未婚である女性教習生と不倫をし、それが噂になって教習所の社会的評価を毀損させ教習生が減少したとして懲戒解雇をしたものがあります。裁判所は当該懲戒解雇を無効としました。この事案では、あくまで噂が原因となったものであり一過性にすぎないこと、教習生側に原因があり再発の恐れはないなどの事情から解雇を無効としています。
(秘書)他にも裁判例はありますか。
(弁護士)消防署職員が同僚の妻と不倫をしたことを理由にした分限免職処分を有効としたものがあります。この事案では、不倫が長期間継続しており、それが原因で同僚夫婦が離婚をしたこと、当該スキャンダルが消防署員や市民に広がり抗議が殺到したことから業務に影響があったことなどの事情から分限免職処分を有効としています。
(秘書)結局不倫が会社秩序等に支障を与えているか、その支障の内容や程度を踏まえて慎重に検討をする必要があるということですね。
(弁護士)その通りです!