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【Q&A】そうだ!弁護士に聞いてみよう!
《従業員の私生活上の非行を理由に、会社は懲戒解雇できるの?》弁護士 伊藤 敦史 2023.12
秘書
今日の刑事事件、有罪の判決だったんですね。この方は自ら会社を退職していましたけど、一般に、業務とは関係のないところで犯罪行為を行ったとき、会社から懲戒解雇処分があったら、応じないといけないんですか?
伊藤弁護士
なるほど。会社が懲戒できるのは、業務中に職場の規律に違反した場合に限定されるはずじゃないかという疑問だね?
秘書
はい、そうです。
伊藤弁護士
結論から言うと、会社は、私行上の非行についても懲戒の対象にできるとされているよ。
秘書
どうしてですか?
伊藤弁護士
会社というのは、一般の人からの評価や信用によって成り立っている面があるよね。高級ブランドも、会社が積み重ねた評価が高いってことじゃない?そういった会社の社会的評価は、従業員の私的な行為によって毀損される場合があるんだよ。
秘書
じゃあ、会社の持つ社会的評価を毀損することをしたら、懲戒の対象になるんですね?でも、それはどうやって判断するんですか?
伊藤弁護士
判例は、ざっくり4つの要素を検討して、会社の社会的評価を毀損したと言えるかどうかを見ているみたい。つまりね、①どのような行為をしたか、②会社の事業の種類・規模、③会社の経済界に占める地位、④従業員の会社における地位等に照らして、「会社が持つ一般の人から見た評価に重大な悪影響を与える行為かどうか」を検討しているね。
秘書
具体例をください!
伊藤弁護士
例えば、大手運送会社のベテラントラック運転手さんが、プライベートで自家用車を飲酒運転して交通事故を起こし、ニュースで大々的に報道されたとしよう。まず、①飲酒運転に対しては、近時の飲酒運転撲滅という社会的要請から厳しい見方をされるのに、飲酒運転のうえ、交通事故まで起こしていて、悪質性が高い。②運送会社として交通安全の確保が強く要請されるだけでなく、③大手の運送会社としては日本の交通安全全体を指導・推進するような社会的責任があったはず。④ベテラン運転手であれば、若手の見本となるべき立場にあったかもしれない。本件がニュースで大々的に報道されていることもふまえると、例に出した行為は、「当該運送会社の社会的評価に重大な悪影響を与えている」と評価できると思うよ。実際の取引で不利益が生じていれば、そのような評価を裏付けることができるだろうね。
秘書
なるほど。わかりました、ありがとうございました!