業務提携先である、フクシマ社会保険労務士法人の社会保険労務士/松本雄介さんによるコラムを連載します。ぜひご覧ください。
目次
「スポットワーク」の労務管理~労務トラブルにならないために~
1.スポットワーク
帝国データバンクの2024年調査によると、「すでにスポットワーカーを活用している企業」は 8.3%、「今後活用を検討したい」が 5.3%、「興味がある(検討段階)」が 24.5%となっており、合計で約4割の企業がスポットワークの活用に前向きであることが示されています。こうした結果から、労働市場におけるスポットワークの存在感は着実に高まっていると言えます。
一方で、スポットワークの急速な拡大に伴い、企業側には留意すべき労務管理上のポイントも生じています。以下では、その主な注意点について解説します。
2.労働契約締結時における注意点
スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結することとなり、労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます。
※スポットワーカーとスポットワーク仲介事業者が労働契約を結ぶものではありません。
スポットワークでは、アプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的です。面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別に特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして、労働契約が成立するものと一般的には考えられます。
労働契約が成立すると、事業主には労働基準法等を守る義務が生じます。予定された就業開始前に労働条件を明示することなどが必要になります。
3.休業させる場合の注意点
(例:丸一日の休業、または早上がりが発生する場合)
労働契約成立後に事業主の都合で丸一日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカー対し、所定支払日までに休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う必要があります。
※休業手当の代わりに、その日に約束した賃金を全額支払うことで差支えはない。
休業手当を支払う場合であっても、事業主自身の故意、過失等により、労働者を休業させることになった場合は、賃金を全額支払う必要があります。
4.賃金・労働時間に関する注意点
業務に必要な準備行為等も労働時間です。事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を就業先内において行った時間などは労働時間に当たります。求人の際に、これらの着替え等の時間も含めて始業・就業時刻を設定しましょう。
その他、一方的な賃金の減額は違法です。賃金について労働条件通知書などで示した額を一方的に減額したり、「別途支払う」としていた交通費を支払わない場合には、労働基準法違反となります。
5.その他の注意点
通勤途中または仕事中にケガをした場合
就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受けることができる。
※労災保険料については、事業者負担となります。
ハラスメント対策も事業主の義務です
スポットワーカーに対するパワハラやセクハラなどハラスメント防止のため、労働施策総合推進法等に基づく、各種措置(相談窓口や行為者に対する措置内容の周知等)を講じましょう。
執筆者
執筆者 フクシマ社会保険労務士法人 社会保険労務士 松本 雄介
プロフィール
得意分野:労働法務
担当業務:人事・労務相談、労務監査 / 人事評価制度の作成・見直し / 社員研修 / 手続き業務 / 諸規程の作成・見直し
お客様へひとこと:ここ数年で労働分野、雇用分野、社会保障・年金分野における色々な動きが、IT・情報分野のようにものすごいスピードで目まぐるしく変化してきており、今後もまだまだ大きな変化が予想されます。その変化への対応に専門家として一つでも多く力になれればと思います。
