業務提携先である、フクシマ社会保険労務士法人の社会保険労務士/松本雄介さんによるコラムを連載します。ぜひご覧ください。
『副業者の労働時間管理』 社会保険労務士/松本雄介 2022.7
副業には、いろいろな形態があり、一定の法律的な問題も生じます。例えば、「すでに正社員として自社で働いている人が他の会社に雇われて働く」という場面では、法律上重要な特徴として、まず、「①本業、副業ともに雇用の形態で行われる」という点が挙げられます。つまり、複雑な労働時間管理が求められるということです。さらに、「②本業ですでに法定労働時間いっぱいまで働いている可能性が高い」という点が挙げられます。そのため、副業での労働は時間外労働となる可能性が高く、労働時間のカウント方法や割増賃金の計算・支払いも問題となってきます。
労働基準法では、他社で働いた時間も通算されると定められています。そのため、法定労働時間に関する規制や、割増賃金も含め、実際の労働時間(実労働時間)に関する規制については、本業と副業の所定労働時間及び実労働時間を合計しなければなりません。
法定労働時間というのは、1日及び1週間で働かせることのできる最長の労働時間を意味します(原則は1日8時間・1週40時間)。これを超える労働は時間外労働となり、36協定の締結等、特別な手続きが必要となります。
例えば、本業の所定労働時間が8時間で副業先の労働時間が3時間というケースを検討してみます。この場合、所定労働時間の合計が11時間となり、原則の法定労働時間を超えてしまいます。この際、時間外労働となるのは、後から採用された(労働契約を締結した)会社での時間です。通常は副業先が後ということになるでしょうから、副業先が36協定等の手続をとる必要がありますし、副業先において時間外労働に該当する時間(この例では3時間分)について割増賃金を支払う必要があることにも注意が必要です。