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クーリングオフってなに?〜特定商取引法による消費者保護

クーリングオフってなに?〜特定商取引法による消費者保護

そもそもクーリングオフとは

女性:先日、電話で化粧品を勧められて、その場の勢いで買ってしまったのですが、こういうのって解約することができるんですよね?クーリングオフでしたっけ?

弁護士:よくご存じですね。でもクーリングオフという言葉、法律の条文には一切書かれていないんですよ

女性:そうなんですか?じゃあ、クーリングオフってどこから出てきたんですか?

弁護士:では、そこから説明しますね

クーリングオフで何ができるのか

自宅を訪ねてきた販売員に勧められるがままに高価な商品を買ってしまった…そんなときに消費者を守る制度として紹介されることが多いクーリングオフ制度。よく取り上げられるので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

クーリングオフ(cooling-off)の元々の意味は「頭を冷やす」「冷静になる」。興奮した状態で結んでしまった契約を冷静になって見直してみる、ということです。そこから転じて、「契約してから一定の期間内に行う無条件解約」のことをクーリングオフと呼ぶようになりました。
クーリングオフの制度は、1960年代後半に英国で初めて導入され、日本では1972年に創設されました。

消費者からクーリングオフがなされると、契約が最初からなかったことになり、販売業者は受け取った代金を返却しなければなりません。商品が消費者のところに届いているのであれば、その引き取りや返却にかかる費用、工事などで土地や建物に変更が加えられているときは元に戻す費用も販売業者の負担となります。通常の契約のキャンセルであれば、販売業者はキャンセル料などを請求できますが、クーリングオフの場合はキャンセル料などの請求も禁止されています。

クーリングオフができる理由

消費者にとってはありがたいクーリングオフの制度ですが、販売業者にとってはせっかく結んだ契約を理由を問わず解約されてしまうことになるので、困った制度といえるかもしれません。ではなぜ、販売業者にとって不利になるような制度ができたのでしょうか。

本来、取引というものは、対等の立場で交渉し、互いに納得したうえで契約に進むべきものです。しかしながら、商品・サービスについての知識があり、取引に慣れている販売業者と消費者とでは、そもそも対等に交渉し、契約を締結することは難しいでしょう。そこでクーリングオフ制度を設け、販売業者がいないところで冷静に契約を見直し、必要のない契約だったときは解約できるようにしたのです。

逆に言えば、販売業者と対等な立場で交渉できる場合や、消費者が商品を自由に選ぶことができ、不要なときは自由に契約締結を断ることができる場合には、クーリングオフを認める必要がないということになります。この点がクーリングオフができる取引とできない取引を分ける基準となっているのです。

クーリングオフができる取引

クーリングオフは全ての取引でできるわけではありません。クーリングオフができる取引について、形態、主体、場所の3つの観点から確認してみましょう。

取引の形態

特定商取引法では、7種類の取引についてルールを定めていますが、このうちクーリングオフができる取引は以下の6種類です。

  • 訪問販売
  • 電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引
  • 特定継続的役務提供
  • 業務提供誘引販売取引
  • 訪問購入

通信販売が対象外となっていることに注意してください。また、上記のどれにも当てはまらない通常の店頭販売も消費者が自由に商品を選ぶことができ、不要なときは契約せずに帰ることができることからクーリングオフの対象外です(店頭販売でも詐欺や強迫により購入させられた場合は契約を取り消すことができます)。

また、上記の6種類に該当する場合でも、以下の契約はクーリングオフが認められません(特定商取引法26条、特定商取引法に関する法律施行令6条~6条の4、7条)。

  • 契約後直ちにサービスが提供されることが通例のもの(飲食店における飲食、マッサージ、カラオケボックス等)
  • 自動車の売買や自動車リースのように契約交渉がある程度長期間になることが想定されるもの
  • 契約後すぐにサービスが提供されないと利用者の利益を著しく害するもの(電気やガスの供給契約、葬儀に関する契約等)
  • 健康食品や化粧品、置き薬(配置薬)など、商品を使用・消費するとその価値が著しく減少するおそれがあるものについて、消費者がその全部または一部を使用・消費したとき(業者に勧められて使用・消費した場合を除く)
  • 商品・サービスの対価の総額が3,000円未満のもの

このほか、クレジット契約・提携ローン(割賦販売法)、生命保険・損害保険契約(保険業法)、宅地建物の売買契約(宅地建物取引業法)などにもクーリングオフが認められています。

取引の主体

特定商取引法は、消費者を保護するための法律です。商品・サービスの購入者が事業・職務のために購入したような場合には、購入した商品・サービスについてよく知っている、あるいは販売業者との間できちんと交渉することができると考えられるため、クーリングオフが認められません。

取引の場所

特定商取引法は、販売業者が「営業所(中略)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結」する場合を訪問販売と定義しています。
契約の申込、契約の締結のどちらかが販売業者の営業所外であれば訪問販売となり、クーリングオフの対象となります。

一方、訪問販売や訪問購入について消費者が販売業者に自宅等への訪問を求めたとき、電話勧誘販売について消費者が販売業者に電話をかけるように求めたときには、クーリングオフが認められません。消費者がそうした契約方法を求めたときにまで消費者を保護する必要はないと考えられるからです。
購入者が海外にいる場合も、特定商取引法を適用するよりも一般の商慣習に任せるほうが適当であると考えられていることから、クーリングオフが認められません。

クーリングオフの手順

女性:クーリングオフの歴史やなぜ認められるのかについて説明していただき、ありがとうございました。実際にクーリングオフをするにはどうしたらいいんですか?

弁護士:クーリングオフは、期限や方法が決められているので、注意が必要です。法律が改正され、新しい方法が追加される予定なので、あわせて説明しますね。

クーリングオフの期限

クーリングオフが無期限に認められると、販売業者はいつまでも契約の効果が確定しないので、安心して商品やサービスを販売することができなくなってしまいます。そこで下の表にあるように、取引ごとにクーリングオフの期限が決められています。

取引 期限
訪問販売 8日間
電話勧誘販売 8日間
連鎖販売取引 20日間
特定継続的役務提供 8日間
業務提供誘引販売取引 20日間
訪問購入 8日間

この期限ですが、申込書を書いた日や商品が届いた日からカウントされるわけではありません。販売業者は契約時に申込内容やクーリングオフに関する事項を記載した書面を渡す必要があり、この書面を消費者が受け取った日からカウントがスタートします。逆に、販売業者がクーリングオフについて消費者に書面で通知しない限り、いつまでもクーリングオフできることになりますが、ルール違反の販売業者は保護する必要がなく、クーリングオフの妨害行為をした販売業者は行政処分の対象ともなっています。

クーリングオフの仕方

クーリングオフは書面で行う必要があります。書面は販売業者に直接手渡す必要はなく、はがきでも構いません。法律上、「書面を発した時」にクーリングオフの効果が発生するとされているため、書面を発送したことを証明できる方法(特定記録郵便や簡易書留)を使うのがおすすめです。

書面には、クーリングオフしたい契約を特定できる情報(契約日、商品名、金額、販売業者の名前・住所、消費者の氏名・住所)を記載し、「契約を解除します」と書けばOKです。下のサンプルも参考にしてください。

クーリングオフはがきのサンプル

改正法

現在は上記のように、クーリングオフは書面で行う必要がありますが、令和3年(2021年)6月に公布された改正特定商取引法では、書面に加え、電子メールなどの電磁的方法によることも認められるようになりました。社会のデジタル化に対応するとともに、クーリングオフの方法を増やすことは消費者保護につながると考えられるためです。この改正特定商取引法は、公布から2年以内に施行される予定です。

なお、電磁的方法によるクーリングオフについても、サーバの不具合等で販売業者に電子メール等が届かなかったときにクーリングオフの効果が生じないとすると、消費者に不利益が生じるため、書面と同様、発信日にクーリングオフの効果が発生するとされています。

通信販売とクーリングオフ

女性:先ほどのクーリングオフの対象となる取引に通信販売が含まれていなかったと思うのですがなぜですか?

弁護士:通信販売にクーリングオフが認められないのには理由があるんですよ。その理由を説明するとともに、通信販売の返品に関するルールについても説明しますね。

通信販売が適用外である理由

特定商取引法でルールが定められている7つの取引のうち、通信販売のみがクーリングオフが認められていません。これは、他の取引が販売業者から対面または電話等で直接契約を勧誘されるのに対して、通信販売は消費者が広告を見て契約を申し込むという取引であることが影響しています。

販売業者は商品・サービスを売るために商品・サービスの良さをアピールし、途中で断られないようにセールストークを日々工夫しています。一度業者のペースに乗せられてしまうと、その場で消費者が断ることはなかなか難しいものです。そのため販売業者の影響を離れ、冷静になって契約を見直す期間=クーリングオフが認められているのです。
これに対して、通信販売の場合、魅力的な広告であっても、他の商品と比較したり、他の人の意見を聞いたりすることで、購入を思いとどまることができます。クーリングオフが認められていなくても、冷静に契約するかどうかを判断することができるというわけです。

返品特約の明記

通信販売にクーリングオフが認められていないとしても、契約の申込をしてから「やっぱり返品したい」と思うことがあります。そこで、特定商取引法は商品を受け取ってから8日以内であれば、返品を認めることにしました(特定商取引法15条の3)。

これだけ見ると、クーリングオフと同じに見えますが、商品の引き取りまたは返還のための費用は購入者負担(クーリングオフは販売業者の負担)、販売業者は返品について特約を定めることができ、返品できない場合をあらかじめ広告に表示しておけば、返品を拒否することもできます(クーリングオフは拒否できない)。

逆に販売業者としては、返品に関する事項を広告に明記することで、返品のリスクを避けることができるようになります。返品特約については、消費者庁からガイドラインが出されているので、詳しくはそちらをご覧ください(通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン)。

指定役務と同じ内容をオンラインで提供すると

女性:コロナ禍の影響もあって、対面式のサービスをオンラインで提供するものも増えてきましたね。こうしたものってクーリングオフできるんですか?

弁護士:実はクーリングオフできないケースが多いんです。いくつかの取引について確認していきましょう

オンライン英会話教室

英会話教室は受講期間が2か月を超えかつ支払金額が5万円を超える場合、特定継続的役務提供に該当し、クーリングオフが認められています。
オンライン英会話教室ではレッスンに使えるポイントやチケットを購入するケースが多いですが、この場合、ポイントやチケットの有効期限が受講期間と判断されます。

オンライン英会話の場合、ポイント等の有効期間が6か月程度に定められていることが多いため、期間の条件は満たすことが多いのですが、支払金額が5万円以下の場合が多いため、特定継続的役務提供に該当しないケースが多いのです。

ただ、運営業者が独自の解約・返金制度を設けている場合があるため、契約前に解約・返金に関する事項について確認しておきましょう。

オンラインサロン

オンラインサロンとは、オンライン上の会員制コミュニティで、サロンの主催者とサロンの会員、あるいは会員同士の交流を目的としたものです。参加するのに月会費を払う必要がある有料制のサロンが多いです。
主催者が有名人で主催者と直接交流できることを期待してファンが参加するファンクラブ型サロンや、主催者がオンラインで知識や情報を教え、会員のスキルアップを図るオンライン教室型サロンなどがあります。

こうしたオンラインサロンは、特定商取引法の規制の対象外のため、クーリングオフが認められません。ただし、「オンラインサロンを人に紹介すると報酬がもらえる」と約束されて会員になったような場合は、連鎖販売取引(いわゆる「マルチ商法」)に該当する可能性があり、この場合はクーリングオフが認められます。

主催者の氏名・所在地、入会・退会の方法、会費など基本的な事項について入会前に確認し、不安に感じたら契約しない勇気も必要です。入会時に規約や契約書が書面で送られてこないような場合は、画面を印刷したり、スクリーンショットを保存しておきましょう。メッセージのやり取りなども保管しておくとトラブル発生時に役に立ちます。

そして、少しでもおかしいと感じたら、弁護士や消費生活センター等に相談するようにしましょう。

DM、SNSを使った広告の注意点

訪問販売というと、販売業者が消費者の自宅を訪ねてくるケースが思い浮かびますが、販売業者の営業所等で契約しても訪問販売となるケースがあります。1つは販売業者が路上等で消費者を呼び止め、営業所等に同行させた場合(キャッチセールス)、もう1つは電話・郵便・電子メールなどで営業所等に呼び出した場合(アポイントメントセールス)です。

具体的には、DMやSNSで「プレゼントに当選したので取りに来てほしい」「アンケートにご協力ください」「見るだけでいいので」などと販売目的を明示せずに営業所等に呼び出したり、「モニターに当選したので商品を安く購入できます」などと他の人に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って営業所等に呼び出したときなどがこれに該当します。

アポイントメントセールスに該当する場合、営業所等での契約であっても訪問販売と同じルールが適用されるため、契約内容に関する書面を渡す必要があり、また、クーリングオフが認められます。これらを怠ると行政処分や刑事罰の対象となるため、十分に注意してください。

まとめ

今回は、クーリングオフについて、クーリングオフの意味、クーリングオフが認められる理由、対象の取引などについて説明しました。クーリングオフは消費者にとって重要な権利であるだけでなく、販売業者にとっても対応を間違えると行政処分や刑事罰を受ける可能性があるため、対象や範囲を十分に理解しておく必要があります。

近年、オンラインでの商品・サービスの提供が増え、それに伴いトラブルも増えていることから、特定商取引法関連の通達やガイドラインも頻繁に改正されています。ビジネスを行ううえで、最新の動向を把握することが大切です。

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